喫煙と歯周病~その1~

2018.08.03

谷山ファミリー歯科クリニックの歯科医師の永田です。
今回は、喫煙と歯周病の関係について考えてます。
喫煙と全身の病気との関連が深いことは、これまで様々な動物実験や疫学調査の統計データで
証明されています。そして、喫煙は生活習慣病の発症と関連の深い習慣であると定義されています。
生活習慣病とは”食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣”がその発症および進行に関与
する疾患(病気)群のことをいいます。今回、注目しているのはその中の喫煙が関与する病気です。
喫煙と肺がんや気管支炎との関連は、よく知られていますが、その他にも関わりの深い病気が多数あります。
喫煙と関係があるとされる口腔内疾患には、歯肉がん、舌がん、そして歯周病があります。
むし歯とならび歯を失う原因の一つである歯周病と喫煙との関係についてみていきます。
通常、吸い込まれたタバコの煙は、歯や口の中の粘膜、そして歯ぐきに触れながら、気管へ、肺へと
吸い込まれていきます。よって、口の中のさまざまな組織は、できたてのタバコの煙が初めて触れる
部分であるといえます。ですので、この煙は周囲の組織にさまざまな影響を及ぼすと考えられます。

歯にタールが沈着すると、表面がざらざらして歯にプラーク(歯垢)がつきやすくなります。特に
歯と歯の間にタールがこびりついてしまうと、歯ブラシでは取れなくなってしまい、歯についた
プラークは歯石になります。
喫煙者では非喫煙者と比較すると、歯周病にかかる危険性が高まるとともに、すでに歯周病に
かかってしまっている人は、その症状がより進行し、重篤になりやすいことがわかっています。
例えば、非喫煙者と喫煙者の歯周病の患者同士を比較すると、喫煙者のほうが歯を支えている
歯槽骨がなくなり、状態が悪いこともわかっています。歯槽骨がなくなるのに伴い、歯ぐきが下がり、
歯の揺れも大きくなる傾向にあります
しかし、意外なことに、悪い部分へのプラークのたまり具合や、それに反応する歯肉の炎症の強さには
喫煙者と非喫煙者間とで違いがあまり見られないことも分かっています。このことは、喫煙は何らかの
仕組みで本来生じているはずの炎症の本当の姿を、厚いベールで隠してしまっている疑いがあるのです。
つまり、喫煙者の歯周病が悪化するのは、プラークのたまる量が多いからではなく、別の原因によることが
考えられます。次回、別の原因を考え、なぜ喫煙で歯周病が悪化するのかについて考えていきます。

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