歯周病とアルツハイマー型認知症の関係

2020.12.11

鹿児島県鹿児島市谷山中央5丁目にある谷山ファミリー歯科クリニックの歯科医師・永田紳吾です。

今回は、認知症の発症に歯周病が関係している可能性があるという論文が最近だされたので、その件について書いてみます。

ます、歯周病学の研究の流れを見ていきましょう!

私が鹿児島大学歯学部の学生の頃、歯周病学の分野では、歯周病のリスクファクター(危険因子)の
研究が盛んに行われていたと記憶しています。
歯周病のリスクファクターとは、どんなことかといいますと、
何が歯周病を悪化させていくのか?という事です。
この研究がなぜ大切かというと、歯周疾患のリスクファクターを取り除いて、
はじめて効果的な歯周疾患の予防を行うことができるからです。

リスクファクターとしては、環境・病因・宿主の3つに分けられ、

環境には、食生活・喫煙・飲酒などの生活習慣要因

病因には、歯垢・歯石、歯周疾患関連菌、外傷性因子、食片圧入、ブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)

宿主には、体質などの遺伝的要因、全身疾患や年齢といった生物学的要因、唾液分泌など

 

 

があげられます。

ここ十数年で、ペリオドンタルメディシン(歯周病と全身疾患の関係)の研究が盛んに行われるようになり、

アルツハイマー認知症(AD)の発症に歯周病が関係している可能性があると論文により発表されました。

認知症の主なものにアルツハイマー型認知症(AD)、脳血管性認知症(VaD)、レビー小体型認知症(DLB)がありますが、
最も頻度が高いのはアルツハイマー型認知症(AD)で認知症全体の40~60%と言われています。
アルツハイマー型認知症(AD)は世界中で研究が進められていますが、治療法はまだ見つかっておりません。
しかし、最近になって認知症の患者の脳内から歯周病の原因菌が検出されたことから治療法の確立に
つながるのではないかと注目が集まっています。これを受けて九州大学の武弘准教授らの研究チームが
マウスに歯周病の原因菌を3週間連続で投与した結果、マウスの脳内にあるアルツハイマー型認知症(AD)を
引き起こすたんぱく質アミロイドベータが10倍に増え記憶力が低下したとのことです。研究チームによりますと、
歯周病患者の歯肉に生じたアミロイドベータが血管を通して体内に侵入しその後、脳内に蓄積され記憶障害などを
引き起こす可能性があるという事です。正しい歯の磨き方を習得し、定期的に歯科医院で歯周病のメンテナンスを
していくことが認知症の予防につながり、今後、歯科の担う役割はさらに重要になってくると思われます。
認知症の発症や症状悪化を防ぐ薬などの開発が進み、薬局で認知症の薬を購入できる日が将来、やってくるかもしれません。

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