喫煙と歯周病~その4~
2018.08.24
カテゴリー: 院長日記
谷山ファミリー歯科クリニックの歯科医師の永田です。
またまた、喫煙と歯周病についてです。
今回は喫煙が体の防御能力を低下させることについて考えてみます。
私たちの体には、生体防御機構といって細菌などの外敵に抵抗するための
仕組みが備わっており、これを”免疫”と言います。
健康な体の場合、インフルエンザウイルスや結核菌などの病原性微生物
(病原菌)の脅威にさらされても必ずしも病気にならないのは、体の中に
侵入してくる敵を免疫によって迎え撃っているからなのです。
口の中にもその仕組みは備わっており口腔免疫機構と言います。
タバコの煙の中の有害物質は、この口腔免疫機構に影響を与え、その
機能を低下させることがわかっています。つまり、有害物質の作用により
病原菌の侵入に抵抗する免疫システムが不具合になって、病原菌が暴れ
回るのを許し、歯を支える組織である歯周組織が破壊されてしまうのです。
この喫煙と免疫抵抗力との関連で研究されているのは、生体防御機構の
最前線で活躍する「好中球」という白血球の一種の役割です。
好中球は病原菌の体への侵入をいち早く察知して近寄り、病原菌を
食べて、消化・殺菌する大切な機能がありますが、これらの能力の発動を、
タバコの煙の中の有害物質が妨害するのです。
このタバコの煙の有害物質として、ニコチン、アクロレイン、そして
シアン化物が知られています。
また、喫煙者ではIgAという唾液の中にある、病原菌に対して抵抗力をもつ
タンパク質である抗体の量が減少していたり、病原菌の感染との戦いに必要な
リンパ球の数が減少していることが分っています。このことも、病原菌と
私たちの体の戦いにとって、不利な状態といえます。
さらに、この病原菌に対する攻撃力が弱まるということは、病原菌の侵入を
示すさまざまな危険信号がうまく発せられないということになります。
つまり、腫れたり、出血したり、熱っぽかったり、痛んだりといった炎症が
起こっていることを示す所見が隠されてしまって、病原菌が悪さをしている
ことに気がつかないことが考えられます。そして、気がついたときには手遅れ
になることもあり得るのです。歯周病の病態までもが隠されてしまっているのです。