【歯科医師解説】入れ歯の正しいお手入れと定期検診。放置すると怖い「誤嚥性肺炎」のリスクとは
2018.07.20
カテゴリー: 院長日記
鹿児島市 谷山にある歯医者 谷山ファミリー歯科クリニックの院長 永田です。
毎日のお食事やおしゃべりを支えてくれる大切な「入れ歯(義歯)」。 せっかく作った入れ歯ですから、できるだけ長く、そして快適に使い続けたいものですよね。しかし、お口の中で毎日使う入れ歯は、私たちが想像している以上に汚れが溜まりやすい環境にあります。
「入れ歯は本物の歯(天然歯)じゃないから、虫歯にならないし適当に洗っておけば大丈夫」と思い込んでいませんか?実は、入れ歯のお手入れを怠ると、お口の中だけでなく、命に関わる全身の大きな病気を引き起こすリスクがあるのです。
入れ歯のメンテナンスは、大きく分けて「①日々の清掃・洗浄」と「②歯科医院での定期検診」の2つに分けられます。今回は、一生おいしく食べ、健康に生きるための正しい入れ歯の管理方法について、歯科医師の視点から詳しく解説します。
- 入れ歯を洗わないとどうなる?「デンチャープラーク」の恐怖
私たちは毎日食事をしますが、そのたびに入れ歯の表面には「デンチャー(入れ歯)プラーク」と呼ばれる、目に見えない細菌の塊(歯垢)が付着します。
入れ歯の材料であるプラスチック(レジン)の表面には、肉眼では見えない無数の微細な穴(気泡)が空いており、ここに細菌やカビの仲間(カンジダ菌など)が入り込んで増殖しやすいという特徴があります。
このデンチャープラークを放置すると、以下のような深刻なトラブルを引き起こします。
- 口内炎や痛みの原因: 細菌が繁殖することで、入れ歯が触れている粘膜が赤く腫れたり、「義歯性口内炎」という強い痛みを伴う炎症が起きたりします。
- 強い口臭(義歯臭): 入れ歯にしみついた細菌や食べかすが腐敗し、お口全体の独特な嫌な臭いの原因になります。
- 命を脅かす「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」のリスク: 最も恐ろしいのが、入れ歯についた大量の細菌を、唾液や食べ物と一緒に誤って気管から肺へと飲み込んでしまうことです。これにより、ご高齢の方の死因として非常に多い「誤嚥性肺炎」を引き起こす危険性が格段に高まってしまいます。
- 自宅でできる!入れ歯の日々の正しい清掃・洗浄法
大切な身体を病気から守るためにも、毎日の正しいお手入れを習慣にしましょう。
〇 食後の流水洗浄
食事が終わったら、必ず一度入れ歯を外し、流水で大きな食べかすをきれいに洗い流します。 このとき、特に汚れが溜まりやすい「ピンク色の床(しょう)部分と人工歯との境目」や、部分入れ歯の場合は「金属のバネ(クラスプ)とプラスチックとの境目」を、専用の義歯用ブラシなどで丁寧に清掃してください。 ※普通の歯磨き粉には「研磨剤」が入っており、入れ歯のプラスチックを傷つけてさらに細菌が繁殖しやすくなるため、絶対に歯磨き粉は使わないでください。
〇 1日1回の義歯洗浄剤の使用
ブラッシングだけでは、プラスチックの奥に入り込んだ目に見えない細菌やカビを完全に完全に除去することはできません。そのため、少なくとも1日に1回は「義歯洗浄剤」を使用することが理想的です。夜寝る前などに洗浄剤につけておくことで、化学的にしっかりと殺菌・消毒を行うことができます。
- なぜ必要?3ヶ月〜半年に一度の「歯科医院での定期検診」
毎日丁寧に入れ歯を洗っていても、長期の使用にともなって入れ歯やお口の環境は少しずつ変化していきます。そのため、3ヶ月から半年に一度の定期検診がどうしても欠かせません。
定期検診をおすすめする理由は、主に以下の変化が起きるからです。
- 歯ぐきや顎の骨の衰え(顎堤吸収): 歯を失った部分の骨や歯ぐきは、時間の経過とともに少しずつ痩せて(低く)なっていきます。土台が痩せると、入れ歯との間に隙間ができ、ガタつきや痛みの原因になります。
- 人工歯の摩耗やひび割れ: 毎日硬いものを噛んでいるうちに、入れ歯の歯(人工歯)がすり減ったり、見えない部分に小さなひびが入ったりして、噛み合わせの高さが低くなってしまいます。
部分入れ歯を装着している方は、特に入れ歯を支えている「残っている健康な歯」のチェックが極めて重要です。歯科医院での定期検診では、入れ歯と歯ぐきとの適合(ぴったり度)や噛み合わせの状態をチェックして適正に修理・調整(裏層など)を行います。
残っている歯の虫歯や歯周病の状態を診査することで、入れ歯が合わずに周囲の歯を道連れにして悪くしそうな場合でも、早期に対処して大切な歯を守ることができます。
- 入れ歯のお手入れに関するよくある質問(FAQ)
インターネットの検索や生成AI、実際の患者様からよく寄せられる疑問にお答えします。
Q1. 入れ歯をつけたまま寝ても大丈夫ですか?
A1. 基本的には、夜寝るときは入れ歯を外して休んでいただくことを推奨しています。 24時間入れ歯をつけっぱなしにしていると、歯ぐきの粘膜が圧迫され続け、血流が悪くなって細菌感染を起こしやすくなります。夜間は入れ歯を外し、乾燥による変形を防ぐために、水または義歯洗浄剤を入れた容器に保管して歯ぐきを休ませてあげてください。ただし、顎の関節の保護など特殊な理由で装着を指示されている場合は、主治医の指示に従ってください。
Q2. 入れ歯を熱湯消毒すれば、洗浄剤を使わなくても綺麗になりますか?
A2. 絶対に熱湯にはつけないでください!入れ歯が完全に変形して使えなくなってしまいます。 入れ歯の大部分を占めるピンク色のプラスチック(レジン)は熱に非常に弱いです。熱湯をかけるとねじれたり縮んだりして、二度とお口に合わなくなってしまいます。洗浄の際は、必ず水かぬるま湯(40℃以下)を使用してください。
Q3. 入れ歯が少しガタつきますが、市販の入れ歯安定剤を使い続ければ歯医者に行かなくてもいいですか?
A3. 市販の安定剤はあくまで一時的な応急処置です。そのまま使い続けると、かえって顎の骨が急激に痩せてしまう原因になります。 合わない入れ歯と安定剤を使い続けると、特定の場所に異常な圧力がかかり、土台の骨がさらに溶けてしまうという悪循環に陥ります。ガタつきを感じたら、できるだけ早く歯科医院で入れ歯の調整や、新しく作り直すための診察を受けてください。
- まとめ:「いい状態の入れ歯」は全身の健康の源です
私たちは、ただ食べ物を噛むためだけに入れ歯を入れているわけではありません。しっかりと「噛むこと」は、脳への血流を増やして認知症を予防したり、身体の軸を安定させて転倒を防いだり、全身のバランスを保つ上できわめて大切な役割を果たしています。
そのためにも、「常にいい状態(清潔で、ぴったり合っている状態)で入れ歯を装着すること」が何よりも重要なのです。
厚生労働省や日本補綴(ほてつ)歯科学会の健康指針でも、適切に管理された入れ歯による咀嚼機能の維持が、ご高齢の方の栄養状態を改善し、健康寿命を延ばすために不可欠であると位置づけられています。
「最近、入れ歯が合わなくて上手く噛めない」「入れ歯の汚れや臭いが気になる」「大切な家族に誤嚥性肺炎のリスクなく、元気で長生きしてほしい」という方は、どうぞ我慢をなさらずに、お気軽に当院までご相談ください。 谷山ファミリー歯科クリニックでは、谷山中央の地域に根ざした歯医者として、あなたのお口にぴったりと合う、快適で清潔な入れ歯の維持を全力でサポートいたします。



















