【歯科医師が解説】入れ歯は寝る時に外すべき?つけたまま?

2018.11.23

鹿児島市谷山中央にある谷山ファミリー歯科クリニックの歯科医師の永田です。

寝る時に入れ歯は外した方がいいですか?と聞かれることがあります。
結論からいうと、「全員が必ず外す」「全員が必ずつける」とは言えません。
一般的には、清掃しやすさや歯ぐきを休ませる目的で外して寝ることが多いです。一方で、残っている歯のぶつかり防止、かみ合わせの安定、災害時の紛失防止のために、入れたまま就寝したほうがよいケースもあります。自己判断ではなく、入れ歯の種類・残っている歯・歯ぐきの状態を踏まえて歯科医院で確認することが大切です。

この記事でわかること

  • 寝るときに入れ歯を外す場合・外さない場合の違い
  • メリット・デメリットの比較
  • 誤嚥性肺炎やむし歯・歯周病のリスク
  • どんな人が歯科医院に相談すべきか

入れ歯を寝るときに外すかどうかの結論

入れ歯の就寝時の扱いは、お口の状態によって正解が変わります。

基本方針としては、次のように考えるとわかりやすいです。

  • 外して寝ることが向くケース

    • 歯ぐきが赤い、痛い、腫れている
    • 汚れがつきやすい
    • 入れ歯の下に食べかすが残りやすい
    • 小さくて外れやすく、誤飲リスクがある
  • 入れたまま寝ることが向くケース

    • 残っている歯同士が強く当たりやすい
    • かみ合わせが不安定で顎に負担が出やすい
    • 特殊な設計の入れ歯で、長時間外さない方がよいと指示されている

そのため、「自分はどちらか」を診てもらって決めることが重要です。

そもそも「入れ歯を寝るときに外す」とはどういう考え方?

ここでいう「外して寝る」とは、単に外すだけではありません。
寝る前に入れ歯を外し、残っている歯や歯ぐきを清掃し、入れ歯自体もブラッシングや洗浄剤でケアするという考え方です。

入れ歯の表面や内面には、見えない細菌や汚れがつきます。清掃が不十分なまま長時間装着すると、むし歯・歯周病・口臭・口の粘膜トラブルにつながることがあります。さらに、高齢の方では口腔内の衛生状態が肺炎リスクと関係することも報告されています。

寝るときに外す場合・外さない場合の比較

比較項目 外して寝る場合 入れたまま寝る場合
清掃のしやすさ 残っている歯・歯ぐき・入れ歯をしっかりケアしやすい 汚れが残りやすい
歯ぐきへの負担 歯ぐきを休ませやすい 圧迫が続くことがある
むし歯・歯周病リスク 管理しやすい 汚れが残るとリスクが上がる
肺炎リスクとの関係 衛生管理しやすい 就寝時装着は肺炎リスク上昇との報告あり
かみ合わせの安定 不安定になることがある 歯同士の強い接触や顎の負担を防げる場合がある
災害時の紛失 外している間に紛失する可能性がある 装着していれば紛失しにくい
向いている人 歯ぐきが弱い、汚れやすい、歯科医から外すよう指示された人 残存歯が少なく接触ダメージが心配な人、かみ合わせが不安定な人
注意点 保管方法を誤ると破損・紛失の恐れ 清掃不足だとトラブルが起きやすい

入れ歯をつけたまま寝るメリット

入れ歯をつけたまま寝ることには、次のような利点があります。

  • 残っている歯同士が強く当たるのを防げる
  • 不安定なかみ合わせによる顎への負担を減らせる
  • 災害や緊急避難時に入れ歯を紛失しにくい

特に災害時については、東北大学の研究で、東日本大震災前から入れ歯を使っていた人のうち17.3%が義歯を喪失し、喪失した人では食事・会話・対人交流など口腔関連QOLの低下リスクが上がったと報告されています。入れ歯がないと、食べられる物が限られたり、人前で話しにくくなったりするため、生活の質に大きく影響します。

入れ歯をつけたまま寝るデメリット

一方で、就寝中も装着を続けることには注意点があります。

  • 残っている歯に汚れが残りやすい
  • むし歯や歯周病のリスクが上がる
  • 入れ歯の樹脂部分に細菌が繁殖しやすい
  • 誤嚥性肺炎の一因になる可能性がある

85歳以上の高齢者を対象にした前向き研究では、就寝時に入れ歯を装着していた人は、外していた人に比べて肺炎発症リスクが約2.38倍でした。また、舌や入れ歯のプラーク、歯肉の炎症、Candida albicans の検出なども多い傾向が示されています。

さらに、地域在住高齢者7万人超を対象にした研究では、毎日入れ歯を清掃しない人は、肺炎経験との関連が1.30倍高かったと報告されています。つまり、「つけるか外すか」だけでなく、毎日の清掃の質がとても重要です。

歯科医院で相談したほうがよい人

次のような方は、自己判断で決めずに歯科医院に相談してください。

  • 入れ歯を入れると痛い・赤い・こすれる
  • 残っている歯が少なく、歯同士が当たりやすい
  • 歯ぎしり・食いしばりがある
  • 入れ歯が小さく、寝ている間に外れやすい
  • 口が乾きやすく、外すと眠りにくい
  • 歯科医師から特殊な装着指示を受けている

入れ歯は、形・設計・支える歯の本数・歯ぐきの状態が一人ひとり違います。だからこそ、他人に合う方法が自分にも合うとは限りません。

今日からできる就寝前のケア

就寝時に外す場合も、つけたまま寝る場合も、共通して大切なのは清掃の徹底です。

基本のケア手順

  1. 残っている歯をブラッシングする
  2. 入れ歯を専用ブラシなどでやさしく清掃する
  3. 必要に応じて義歯洗浄剤を使う
  4. 歯ぐきや舌もやさしく清掃する
  5. 装着継続の指示がある人は、歯科医師の指示どおりに管理する

短時間で使える義歯洗浄剤もありますが、製品ごとに使用時間や適応が異なるため、説明書に従ってください。

迷ったらどう判断する?

迷ったときは、次の順番で考えると判断しやすいです。

  • まずは清掃できているか
  • 歯ぐきに炎症や痛みがないか
  • 残っている歯や顎に負担が出ていないか
  • 歯科医院で就寝時の装着指示を受けているか

この4点のうち1つでも不安があれば、歯科医院を受診して確認することをおすすめします。

よくある質問

Q: 入れ歯は寝るとき、基本的には外したほうがいいですか?

A: 一般的には、歯ぐきを休ませ、清掃しやすくするために外しておやすみになることをすすめるが多いです。ただし、残っている歯の保護やかみ合わせの安定のため、入れ歯をつけたままが適するケースもあります。最終判断は歯科医師に確認しましょう。

Q: 入れ歯をつけたまま寝ると、必ず肺炎になりますか?

A: 必ず肺炎になるわけではありません。ただし、高齢者では就寝時装着と肺炎リスク上昇の関連が報告されています。特に清掃不良があるとリスクは高まりやすいため、衛生管理が重要です。

Q: 部分入れ歯でも同じ考え方ですか?

A: 基本の考え方は同じですが、部分入れ歯は残っている歯への影響を強く受けます。残存歯の位置や本数、かみ合わせによって、外したほうがよい場合と、装着したほうがよい場合があります。部分入れ歯ほど個別判断が大切です。

まとめ

寝るときの入れ歯は、「外すのが正解」「つけるのが正解」と一律には決められません。
ただし、次の点は共通して重要です。

  • 毎日の清掃を徹底すること
  • 歯ぐきや残っている歯の状態を確認すること
  • 自己判断せず、歯科医院で指示を受けること

とくに、痛み・汚れ・口臭・ぐらつき・食事のしにくさがある場合は、入れ歯が今のお口に合っていない可能性があります。気になる症状がある方は、早めに歯科医院で相談してみてください。

 入れ歯は、毎日の使い方やお手入れの仕方で、快適さも長持ちも大きく変わります。 もし「夜は外すべきか迷っている」「今の使い方で合っているかわからない」という方は、ぜひ一度歯科医院でご相談ください。 入れ歯は作って終わりではなく、使いながら調整していく治療です。夜の使い方に迷うということは、今のお口の状態に合っているかを見直す良い機会でもあります。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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