寝るとき入れ歯は?(外す?or外さない?)

2018.11.23

鹿児島市谷山中央にある谷山ファミリー歯科クリニックの永田です。

今回は、患者さまからよく受ける質問の一つ「寝る時に、入れ歯は外すか外さないか」
について考えてみたいと思います。

入れ歯を寝るときに装着するかしないかは、いろいろな意見があります。
そもそも、入れ歯を寝る時に外す大きな理由の一つは、入れ歯とご自分の
歯をしっかりとケアする必要があるからです。

今までは、夜歯みがきをするときに入れ歯を外して義歯洗浄剤の溶液に浸し、
朝起きてから装着するのが一般的でした。ところが、今では5分程度で洗浄できる
義歯洗浄剤が主流となり、夜間お口に入れたままで就寝することをおすすめしやすく
なりました。

入れ歯を入れたまま就寝することには、
・残った歯同士が強く当たってしまうことを防ぐ
・不安定なかみ合わせで顎に余計な負担をかけるのを防ぐ
という利点があります。

その他には地震や火災といった非常時の避難による入れ歯の紛失を防ぐことが
挙げられます。避難所での食事は、特に最初のうちは柔らかい食材などの用意・
提供が難しく、入れ歯がなくて食事ができないことによって体力が低下し、
免疫力も低下することで感染症にかかりやすくなると言われています。

実際に東北大学での「東日本大震災による義歯喪失の口腔の健康への影響:後ろ向き
コホート研究」では、災害時に、義歯(入れ歯)を喪失した被災者では、口腔の
健康が低下するリスクが上昇すると結論として出ています。
義歯(入れ歯)がなければ、食べられない食品が存在したり、人から見られることや
会話を避けたくなることによってクオリティ・オブ・ライフ(QOL)が低下する
ためだと考えられます。

一方、入れ歯を入れたままだと、どうしても残った歯の汚れが落ちにくく、むし歯や
歯周病のリスクが高まります。入れ歯の材料の樹脂は目に見えない小さい穴があるために
細菌が繁殖しやすく、汚れたままだと誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因になることもあります。

残っているご自分の歯はしっかりとブラッシングを行い、入れ歯もブラッシングした後に
義歯洗浄剤の溶液に浸けることが重要です。

入れ歯は、形や残った歯の状態が人それぞれなので、就寝時に外すか外さないかは一概に
どちらが正しいとはいえません。また、歯肉の状態によっては就寝時に入れないほうがよい
場合もあります。ご自分で判断せず、かかりつけの歯科医院で相談されることをおすすめします。

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