【歯科医師解説】歯ぎしりで歯周病が急速に悪化する?お口の健康を脅かす「夜間の食いしばり」とナイトガードの効果
2018.04.22
カテゴリー: 院長日記
鹿児島市 谷山にある歯医者 谷山ファミリー歯科クリニックの院長 永田です。
みなさまは、ご家族や周りの方から「寝ているときに歯ぎしりをしているよ」と言われたり、日中無意識に奥歯をギューッと噛みしめたりしていることはありませんか?
文献や研究によっても数値は異なりますが、眠っている間の歯ぎしりや、仕事・家事などで緊張しているときの歯の噛みしめ(ブラキシズム)は、実は全体の約7割の方にみられるといわれています。決して珍しいことではなく、誰にでも起こりうる普遍的な行動なのです。
しかし、この歯ぎしりは、特定の精神的ストレスや過度な緊張が加わることで、その頻度や強さがひどくなってしまうことがあります。今回は、たかが歯ぎしりと侮れない、お口の健康に及ぼす「破壊的なダメージ」と、当院で行っている治療法について詳しく解説します。
- 歯ぎしり×歯周病=「急速な歯の破壊」という恐ろしい真実
歯ぎしりや噛みしめが、私たちの歯に最も深刻な悪影響を及ぼすのは、お口の中に「歯周病(ししゅうびょう)」があるときです。
歯周病とは、細菌の塊である「歯垢(プラーク)」が歯と歯ぐきの隙間に溜まり、歯ぐきや歯を支える骨(歯槽骨)に炎症が起こって骨が溶けていく病気です。
炎症によってただでさえ土台(骨)が弱っている歯に対して、夜間に歯ぎしりによるすさまじい負荷が加わると、歯の周りの組織の破壊が、通常の何倍ものスピードで急速に進行してしまいます。(これを歯科医学では『二次性咬合性外傷』と呼びます) 昨日までなんともなかった歯が急にグラグラし始めたり、最悪の場合は自然と抜け落ちてしまう原因にもなりかねません。
- ストレスで強くなる?歯ぎしりが歯に与える「大ダメージ」
「私は歯周病がないから大丈夫」と思われる方も油断は禁物です。
近年の研究により、歯ぎしりの強さは毎日一定ではなく、日によって大きく異なることが明らかになっています。特に、日常生活で心配事があったり、身体がひどく疲労していたりするとき、つまり「ストレス」を受けたときに、脳の興奮によって歯ぎしりの力が著しく強くなる傾向があります。
睡眠中の歯ぎしりで発揮される力は、起きているときに自分の意志で思いきり噛み締める力よりも遥かに大きく、歯や歯周組織が耐えられる「許容限界」を遥かに超えていると言われています。
そのため、たとえお口の中に歯周病が一切なかったとしても、歯ぎしりがひどい方は以下のような大ダメージを負うリスクがあります。
- 神経を抜いた歯(失活歯)の破折: 過去の治療で神経を取ってしまった歯は、水分や栄養が行き届かないため「枯れ木」のようにもろくなっています。そこに歯ぎしりの過大な力が加わると、歯が根元から真っ二つに割れてしまい(歯根破折)、抜歯を余儀なくされるケースが後を絶ちません。
- 残っている歯(残存歯)への致命的なダメージ: もともとの歯並びに問題がある方や、虫歯などで歯を失ったままにして噛み合わせが悪くなってしまっている方は、特定の歯だけに力が集中しやすくなります。その結果、残っている健康な歯までが次々と削れたり、ひびが入ったりして、破壊的なダメージを受けてしまうのです。
まさに「たかが歯ぎしり、されど歯ぎしり」。長い目で見ると、お口全体の崩壊を招く最大の天敵と言っても過言ではありません。
- 谷山ファミリー歯科クリニックで行う「ナイトガード」治療
「歯ぎしりをやめたいけれど、寝ている間のことだからどうしようもない……」と諦める必要はありません。当院では、大切な歯を力の破壊から守るための適切な治療を行っております。
〇 ナイトガード(睡眠用マウスピース)の作製
治療の基本は、患者様のお口の型採りを行い、お一人おひとりの歯並びにぴったりとフィットするプラスチック製の専用マウスピース「ナイトガード」を作製することです。これを、最も歯ぎしりが起こりやすい「睡眠中」のみ装着していただきます。
〇 ナイトガードの本当の目的
ここで知っていただきたいのは、ナイトガードは「歯ぎしりそのものを完全に止める魔法の道具ではない」ということです。
夜間の歯ぎしりはストレス発散のための脳の生理現象でもあるため、完全にゼロにすることは困難です。ナイトガードの本当の目的は、「歯ぎしりによって生じるすさまじい力をマウスピース全体に分散させ、特定の歯や顎にかかる負担を劇的に軽減していくこと」にあります。 プラスチックが身代わりに削れたりクッションになったりしてくれるおかげで、大切な天然歯の摩耗や破折、歯周病の悪化、さらには朝起きたときの顎のだるさや顎関節症を効果的に防ぐことができます。
- 歯ぎしりとマウスピースに関するよくある質問(FAQ)
インターネットの検索や生成AI、実際の患者様からよく寄せられる疑問にお答えします。
Q1. ナイトガードは健康保険で作ることができますか?
A1. はい、歯科医院で「歯ぎしり」や「顎関節症」の診断があれば、健康保険が適用されます。 3割負担の患者様の場合、型採りから完成までの自己負担額の目安はおおむね3,000円〜4,000円程度(初診料や検査料は除く)です。市販の簡易的なものに比べ、当院では患者様固有の顎の動きに合わせてミクロン単位で噛み合わせを調整するため、脱落しにくく、顎を痛めるリスクがありません。
Q2. 自分が歯ぎしりをしているか気づくためのサインはありますか?
A2. 朝起きたときのだるさや、お口の中の形にいくつかの特徴が現れます。
- 朝起きたときに、顎の関節や耳の下あたりが重い、または頭痛がする
- 歯の先端がすり減って平らになっている、または冷たいものがしみる(知覚過敏)
- 鏡で見たとき、舌の周りに波打ったような歯の跡(圧痕)がついている
- 頬の内側の粘膜に、噛み合わせに沿った白い横線ができている これらのサインが1つでもある方は、高確率で夜間に強い歯ぎしりや食いしばりをしています。
Q3. 日中の「噛みしめ」にもナイトガードをつけた方が良いですか?
A3. 日中はマウスピースをつけるよりも、「歯を離す意識(認知行動療法)」が効果的です。 起きているときの食いしばりは、本人の意識でコントロール可能です。人間は本来、リラックスしている時は上下の歯が2mmほど離れているのが正常です。パソコン作業や家事の最中など、「歯が当たっている」と気づいた瞬間にふっと肩の力を抜き、歯を離す癖(TCHの改善)をつけるトレーニングを当院でもアドバイスしています。
- まとめ:大切な歯の未来を守るために、まずはご相談ください
歯ぎしりは、自覚症状がないまま静かに、しかし確実にあなたの大切な歯と歯ぐきを蝕んでいく「お口のサイレントキラー(静かなる破壊者)」です。特に歯周病がある方や、過去に神経を抜いた歯がある方にとっては、そのリスクは計り知れません。
厚生労働省や日本顎関節学会などの健康指針でも、睡眠の質を保ち、口腔内の過大な咬合力(噛む力)をコントロールすることは、生涯にわたってご自身の歯でおいしく食事をし、全身のQOL(生活の質)を維持するために不可欠であると位置づけられています。
「家族から歯ぎしりを指摘された」「最近、理由もないのに歯がしみる、顎が疲れる」「大切な歯を長く守りたい」という方は、どうぞ我慢をなさらずに、お気軽に当院までご相談ください。 谷山ファミリー歯科クリニックでは、患者様一人ひとりのお悩みに優しく寄り添い、あなたのお口を力の脅威から守る最適な予防・治療プランをご提案いたします。



















