【歯科医師解説】母子手帳にある「むし歯の罹患型(O1・A・B・C型)」とは?判定基準と将来のリスクを分かりやすく解説
2016.01.03
カテゴリー: 院長日記
お子様の乳幼児健診(1歳半健診や3歳児健診など)のあと、母子健康手帳(母子手帳)の歯科健診ページを見返していて、「むし歯の罹患型(りかんがた)」という項目に目が留まったことはありませんか?
欄内には「O1」「O2」「A」「B」「C」といったアルファベットが書かれており、「これって一体どういう意味?」と疑問に思われる親御様も多いことと思います。
この「むし歯の罹患型」とは、単にお口の中にむし歯があるかないかだけでなく、「その子のむし歯の進み方のパターン」や「今後のむし歯のなりやすさ、生活習慣の深刻度」を歯科医師が総合的に判断するための重要な分類です。
今回は、それぞれの型が何を意味しているのか、そして我が子の健康を守るためにどう読み解けば良いのかを、歯科医師の視点から分かりやすく解説します。
- むし歯の罹患型(5つの分類)とその判定基準
むし歯の罹患型は、大きく分けると「O(オー)型」「A型」「B型」「C型」の4つ、細かく分けると「O1型」「O2型」を含めた5つのステージに分類されます。
アルファベットが進むほど、むし歯の範囲が広がり、生活習慣(おやつの与え方など)の改善が急務であるというサインになります。
① O1型(オーワンがた)
- 【状態】: 現在むし歯(う蝕)が1本もなく、お口の中の衛生環境も非常に良い状態です。
- 【背景】: 甘いものを過度に好む傾向がなく、規則正しい間食(おやつ)の習慣がしっかりと身についていると認められる優秀なステージです。現在のケアをぜひ継続してください。
② O2型(オーツーがた)
- 【状態】: 現在はまだむし歯はありません。しかし、歯垢(プラーク)の残りや歯ぐきの状態などから、お口の中の衛生環境があまり良くない状態です。
- 【背景】: 「近い将来、むし歯になってしまう可能性(不安)が高い」と判断された状態です。仕上げ磨きの手順や、だらだら食べの習慣を見直す必要があります。
③ A型(エーがた)
- 【状態】: 「上の前歯だけ」、または「奥歯(臼歯部)だけ」にむし歯がある状態です。
- 【背景】: むし歯の初期段階、あるいは特定の場所にプラークが溜まりやすい状態です。奥歯だけの場合は、歯と歯の間の磨き残し(デンタルフロスの不足)などが主な原因として考えられます。
④ B型(ビーがた)
- 【状態】: 「奥歯」と「上の前歯」の両方にむし歯が広がっている状態です。
- 【背景】: むし歯のリスクがかなり高まっています。お口の中にむし歯菌が多く、哺乳瓶で甘いジュースを長く飲んでいたり、砂糖の多いおやつを頻繁に摂取したりする習慣(哺乳瓶う蝕などの背景)が疑われるため、速やかな治療と生活改善が必要です。
⑤ C型(シーがた)
- 【状態】: 「奥歯」および「上下すべての前歯」にむし歯が認められる状態です。
- 【特徴】: 奥歯のある・なしに関わらず、「下の前歯」に1本でもむし歯がある場合は、それだけでC型に分類されます。
💡 なぜ「下の前歯」にむし歯があると重症(C型)なの? 下の前歯の裏側には、唾液が湧き出る出口(唾液腺)があります。唾液には歯を洗い流し、初期むし歯を元に戻す「自浄作用・再石灰化作用」があるため、下の前歯は本来、お口の中で最もむし歯になりにくい場所なのです。 そんな場所にまでむし歯ができてしまっているということは、お口の中が常に強い酸性に晒されている証拠であり、非常に深刻な「重度う蝕(ランパントう蝕)」の状態であると言えます。
- 罹患型から見えてくる「生活習慣」の改善ポイント
この罹患型は、単に「歯を削って治療すれば終わり」というものではありません。特にB型やC型と判定された場合は、歯科医院での治療と並行して、ご家庭での「生活習慣の根本的な見直し」が必要不可欠です。
子どもの乳歯のむし歯は、以下のような悪習慣が引き金となって進行します。
- だらだら食べ・だらだら飲み: ジュースやスポーツドリンク、おやつを時間を決めずに1日に何度も口にしていると、お口の中がずっと酸性のままになり、歯が溶け続けます。
- 寝る前の甘いもの: 寝ている間は、お口を守ってくれる唾液の分泌量が激減します。寝る前に甘いものを口にしたり、ジュースを飲んだりしてそのまま寝てしまうと、むし歯菌の爆発的な増殖を招きます。
リライト前の元の記事でも院長先生が指摘されていた通り、いつか生え変わる乳歯だからといって放置してしまうと、次に生えてくる一生モノの永久歯の「むし歯になりやすさ」や「将来の美しい歯並び」に壊滅的な悪影響を及ぼします。
- 母子手帳の歯科健診に関するよくある質問(FAQ)
インターネットの検索やAI、健診後の親御様からよく寄せられる疑問にお答えします。
Q1. 健診で「O2型」や「A型」と言われました。ショックですが、今からでも間に合いますか?
A1. もちろん、今から始めれば十分に間に合います!決して落ち込む必要はありません。 O2型やA型は、いわば「お口からのイエローカード(早期の警戒サイン)」です。この段階で歯科医院を受診し、正しいブラッシング方法(特に歯と歯の間のデンタルフロスの使い方)を習い、食事やおやつのルールを少し整えてあげるだけで、むし歯の進行をピタッと止め、将来の永久歯をピカピカの健康な状態に導くことができます。
Q2. 健診の時に大泣きしてしまい、正しく診てもらえたか不安です。
A2. 集団健診の短い時間では、細かいむし歯が見落とされてしまうこともあります。 保健所などの健診は、限られた時間と設備(暗い照明や手鏡など)で行うため、歯と歯の間の隠れた初期むし歯などは見つけにくいという側面があります。健診で「むし歯なし(O1型)」と言われた場合でも、半年に1回は歯科医院の明るい照明と専用の器具で、精密な定期検診とフッ素塗布を受けることを強くおすすめします。
Q3. フッ素を塗っていれば、おやつを制限しなくても大丈夫ですか?
A3. いいえ、フッ素は万能薬ではないため、食習慣のコントロールが最優先です。 フッ素には歯を強くする素晴らしい効果がありますが、毎日のように「だらだら食べ」をしてお口の中が酸性に傾き続けていれば、フッ素の壁を突き破ってむし歯になってしまいます。「正しい食習慣」という土台があって初めて、フッ素やシーラントといった予防処置が最大の効果を発揮します。
- まとめ:母子手帳のサインを、未来の健康へのステップに
母子健康手帳に書かれている「むし歯の罹患型」は、決してお父様・お母様のこれまでの育児を責めるためのものではありません。お子様の現在のお口の環境を正しく知り、「これから先の永久歯をどうやって守っていくか」を教えてくれる、身体からの大切なバロメーター(指標)です。
厚生労働省や日本小児歯科学会の健康指針でも、乳幼児期におけるう蝕罹患型の把握と、それに応じた早期の生活指導・歯科介入が、成人期以降の良好な口腔環境(QOL)を築くために極めて有効であると位置づけられています。
「母子手帳にAやBと書かれてしまって不安…」「我が子の型に合わせた正しいケア方法を知りたい」という方は、どうぞ一人で悩まずに、お気軽に当院までご相談ください。お子様の未来の笑顔のために、優しいスタッフと一緒に、今できる最善の予防計画を立てていきましょう。



















