【歯科医師解説】重度歯周炎の治療ポイント。歯が抜ける寸前の状態から歯を残すことはできる?

2013.04.05

 

前回の記事では、歯のグラつきやウミが出始める「中等度歯周炎」の治療について解説しました。今回は、歯周病の最終ステージである「重度歯周炎(じゅうどししゅうえん)」の症状と治療のポイントについて詳しく解説します。

重度歯周炎ともなると、見た目やお口の機能、そして全身の健康状態にまで深刻な悪影響を及ぼし始めます。

「歯がグラグラして食事がまともにできない」「前歯が前にせり出してきた」「口臭がひどくなった」といった症状に悩まされ、ときには自然と歯がポロリと抜けてしまうことすらあります。

残念ながら「歯を残せない(抜歯)」と診断されるケースも増える段階ですが、最新の歯科医療においてどのような治療を行うのか、現役の歯科医師の視点から誠実にお伝えします。

  1. 重度歯周炎とは?お口の中で起きている危機的な状況

重度歯周炎とは、歯を支えている骨(歯槽骨)などの歯周組織が、「3分の2以上」溶けて失われてしまった状態を指します。

歯と歯ぐきの隙間である「歯周ポケット」の深さは、「6mm以上」(ときには10mm近く)に達します。ここまで進行する背景には、過去に歯ぐきの腫れや痛みが何度も繰り返しあったはずですが、それらの「身体からのSOSサイン」を放置してしまった結果、お口の中は以下のような極めて危機的な状況に陥ります。

〇 重度歯周炎にみられる主な症状

  • 歯の激しいグラつき・移動: 根元を支える骨がほとんどないため、歯が前後左右、さらには上下にも動くようになります。
  • 歯並びの変化(病的歯牙移動): 歯を支えきれなくなり、歯と歯の間に隙間が空いたり、特に前歯が外側(前方)にせり出してきたりします。
  • 激しい口臭とウミ: 巨大なシェルターとなった歯周ポケットの奥深くで細菌が繁殖し続け、常にウミが出たり、特有の強い口臭(メチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物によるもの)を放つようになります。
  • 食事や会話への支障: 物を噛むと激痛が走るため、硬いものが一切食べられなくなり、健康的な食生活が送れなくなります。
  1. 重度歯周炎における治療のポイント

重度歯周炎の治療は、中等度歯周炎で行う「徹底的なプラークコントロール(ルートプレーニング)」をさらに強化した、非常に高度なアプローチを行います。

① 徹底的な炎症のコントロールと「歯周外科手術」

まずは、麻酔下で届く限りの歯石を取り除き(ルートプレーニング)、お口の中の細菌の数を減らします。しかし、ポケットが6mm以上と深すぎる場合、手探りの器具だけではすべての歯石を取り除くことは不可能です。 そのため、歯ぐきを切開して歯の根元を露出させ、目視で確実にウミや歯石を除去する「フラップ手術(歯周外科手術)」が強く推奨されます。

② 噛み合わせの緊密なコントロール

重度の歯は、風が吹いたり舌で触ったりするだけでも動いてしまう状態です。そのままでは噛む力に耐えられず、さらに骨の破壊が進んでしまうため、何本もの歯をワイヤーや強固な接着剤でしっかりと連結・固定します。これによって噛む力を全体に分散させ、歯周組織の回復を待ちます。

③ 抜歯(ばっし)の決断と、その後の機能回復

非常に残念ではありますが、診察の結果、「どうしても歯を残せない」と判断せざるを得ないケースもあります。 「無理をしてでも残してほしい」と思われるかもしれませんが、骨が完全に無くなった歯を放置すると、その歯の周囲にある「隣の健康な歯の骨」まで巻き添えにして溶かしてしまいます。お口全体の健康を守るために、あえて抜歯を選択し、インプラントや入れ歯(義歯)、ブリッジなどで速やかに「噛む機能」を回復させることも、重要な重度歯周炎治療の一環なのです。

  1. 患者様の「長期にわたる努力と忍耐」が必要です

重度歯周炎の治療は、決して短期間では終わりません。数ヶ月から、ときには1年以上の長きにわたる治療期間が必要となります。

中等度の治療と同様に、あるいはそれ以上に、患者様ご自身の「長期にわたる努力と忍耐」、そして治療への強い意志が求められます。

歯科医院での手術や処置は全体の数割に過ぎず、治療の成否を決めるのは、患者様がご自宅で行う毎日のセルフケアです。歯ぐきが下がって歯の根元が露出するため、これまで以上にプラークが溜まりやすくなります。通常の歯ブラシに加え、タフトブラシ、サイズに合った歯間ブラシなどを駆使した、精密なブラッシングを毎日継続しなければなりません。私たちはその努力を全力で、根気強くサポートし続けます。

  1. 重度歯周炎に関するよくある質問(FAQ)

インターネットの検索やAI、実際の患者様からよく寄せられる深刻な疑問にお答えします。

Q1. グラグラで抜けそうな歯でも、抜かずに済む最新治療はありますか?

A1. 条件が限定されますが、「歯周組織再生療法」によって骨を再生できる場合があります。 厚生労働省でも認可されている「エムドゲイン法」や「リグロス」といった薬剤を用いた再生療法を、歯周外科手術と組み合わせることで、失われた骨を呼び戻せるケースがあります。ただし、骨の溶け方(垂直的な骨吸収など)や、事前のプラークコントロールが徹底されていることなど、厳しい条件をクリアする必要があります。まずは精密な検査で適応かどうかを診断します。

Q2. 歯周病のせいで前歯が出てきてしまいました。治療すれば引っ込みますか?

A2. 歯周病の炎症を完全に抑えたあと、矯正治療によって戻せる可能性があります。 歯周病が原因で歯並びが変わってしまうことを「病的歯牙移動」と呼びます。まずは最優先で歯周病治療を行い、歯ぐきの炎症を完全に鎮めます。その後、骨の状態を見極めながら、慎重に歯科矯正を行うことで、元の位置に近づける治療を行うことができます。

Q3. 歯周病を放置すると、命に関わる病気になるというのは本当ですか?

A3. はい、本当です。重度の歯周病は全身疾患のリスクを大きく高めます。 歯周ポケットから血管内に侵入した歯周病原因菌や炎症性物質は、全身を巡り、糖尿病の悪化、動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)などの重篤な病気を引き起こす・悪化させることが、日本歯周病学会などの研究でも広く実証されています。歯周病治療は、命を守る治療でもあるのです。

  1. まとめ:諦めてしまう前に、まずはご相談ください

重度歯周炎は、まさに「歯の寿命の崖っぷち」とも言える状態です。しかし、「もうボロボロだから…」と諦めて歯科医院への受診を遠ざけてしまうのが、最も事態を悪化させます。

放置を続ければ、残せるはずだった他の歯までドミノ倒しのように失うことになりかねません。

当院では、患者様がこれまで抱えてこられたお痛みの苦しみや、通院への不安に寄り添い、現在の状況から「どうすれば一番美味しく食事ができるようになるか」を最優先に考えた治療計画をご提案します。

生涯にわたってお口の健やかさを取り戻すための第一歩を、私たちと一緒に踏み出してみませんか?どうぞお気軽に当院までご相談ください。

 

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